お役だち記事

「利休七則」に学ぶフリーランス七則

著者のWebメディアからの転載記事です。
(著者:黒田悠介さんからの承諾はいただいております)

概要

ビジネスは誰かの課題を解決するもの、という言い方があります。また、「働く」の語源は「傍を楽にする」だという説もあります。

どちらも自分以外の他者を主眼に置いていることばです。個人も国家も、利己心をエンジンにして成長を遂げるフェーズはあるでしょうけど、あるところから「他者のため」という視点が欠かせなくなってきます。私自身も30歳を過ぎてそのように感じます。また、日本という成熟国家も、経済成長以上にこれからは文化的な活動を通じて世界を良くする利他性が重要になってくるのではないでしょうか。

そういえば、利他について知られていることばに「

利休七則

」があります。

利休七則とは

「利休七則」は千利休がまとめた茶道の基本です。

1.茶は服のよきように点て

2.炭は湯の沸くように置き

3.花は野にあるように生け

4.夏は涼しく冬暖かに

5.刻限は早めに

6.降らずとも傘の用意

7.相客に心せよ「茶の湯とはどのようなものか」という弟子の問いに対する答えが発祥と言われています。弟子はこの利休七則を聞いて「簡単なことですね」と言ったそうですが、それに対して利休は「

それなら私があなたの弟子になりましょう

」と答えたそうです。

そのくらい、言うは易く行うは難し、と伝えたかったのでしょう。

千利休が遺したおもてなしの心を現代に伝えるこのことば。現代のフリーランスにおいても重要だと感じます。千利休をフリーランスに、客をクライアントに置き換えて考えてみるとそれが分かってきます。

フリーランスが利休に学べること

1. 茶は服のよきように点て

「お茶を飲む人が飲みやすいように茶を点てよう」ということです。フリーランスはクライアントの課題を解決するもの。自分のやりたいことをやる、ということではありません。相手の状況や気持ちを察して、課題を見出す態度が必要になってきます。

この一則は「価値は課題を解決するように提供し」と言い換えられます。

2.炭は湯の沸くように置き

「炭はお湯が沸くように置こう」ということですが、これは事前の準備や見えない用意をしっかりとしておこうということです。要点を押さえた段取りができて初めて、目に見える成果が出てくるものです。

この二則は「事前準備をしっかり行い」と言い換えられます。

3.花は野にあるように生け

「床の間に飾る花は野原を想起させるように生けよう」ということ。

余計なものを省き、本質的でシンプルな美しさから野原を感じさせる。派手さや面白さの奥にある、アイデアの本質を見抜く目が必要です。ビジネスモデルならまずはその「課題」と「顧客」を明確にする、といった感じでしょうか。

この三則は「アイデアはシンプルに伝え」と言い換えられます。

4.夏は涼しく冬暖かに

これはことばの通りですが、利休が言っているのは空調のことではありません。打ち水をしたり菓子を工夫することで、相手の体感温度を少しでも変えて快適にしよう、ということです。

その場を良いものにしようという意識から、様々な工夫をする。早くレスをしたり、話し方や使うことばを変えたり。他にも納品形態を相手に合わせるなど、できることはたくさんあります。

この四則は「レスは早く対応は丁寧に」と言い換えられます。

5.刻限は早めに

「時間に余裕を持とう」ということですね。これは、時間のことを言いながらも、精神的な余裕のことを言っているのでしょう。

次のアポのことでアタマがいっぱいになってしまったら、目の前のクライアントに最大限の価値を提供することはできません。また、納期に追われていては、相手の想像を超える納品物はできません。

この五則は「案件は受けすぎないよう」と言い換えられます。

6.降らずとも傘の用意

「雨が降らなくても傘を用意しよう」ということ。不測の事態に備えておく、ということ以上に、客が雨の心配をせずに済む、というのも重要でしょう。

クライアントの不安を先回りして取り除くことで、フリーランスは信頼関係を築きやすくなります。不安は特に報酬と成果物、その納期に対して発生しやすいものです。

この六則は「念のため契約書の用意」と言い換えられます。

7.相客に心せよ

「同席したお客さまに心配りをしよう」ということ。これは、お客さま同士の気配りについて触れている点で、1~6までとは異なります。その場にいる全ての人がお互いに尊重し合うことで、より良い場になるということでしょう。

フリーランスでの仕事も、ステークホルダーがたくさんいます。コミュニケーションを直接取っている担当者以外に、その上司がいたり、代理店がいたり、社内の人材とチームを組むこともあります。

そのプロジェクトに参加している全ての人が互いを尊重し合える空気を大事にしたいですね。

この七則は「プロジェクトメンバーとフラットに接しよう」と言い換えられます。

フリーランス七則

こうして新たに、フリーランス七則と呼べるものができあがりました。振り返ってみましょう。

1.価値は課題を解決するように提供し

2.事前準備をしっかり行い

3.アイデアはシンプルに伝え

4.レスは早く対応は丁寧に

5.案件は受けすぎないよう

6.念のため契約書の用意

7.プロジェクトメンバーとフラットに接しよう

これをきっちり行えば「おもてなし」に満ちたフリーランスとしてリピーターやクチコミでの依頼が増えそうですね!利休は私たちにアタリマエの基準を上げることを教えてくれます。