著者のWebメディアからの転載記事です。
(著者:黒田悠介さんからの承諾はいただいております)
前提として、フリーランスは事業主である。
自分を主体とする事業体の経営を行うものであり、一般的な法人とのアナロジー(類比)が成り立つ。
つまり、法人が経済活動の「自由」を認められているように、フリーランスの経済活動もまた「自由」である。また、社会に対して何らかの価値を提供し、それによって利益を得る点でも両者に差はない。
法人の経営経験のある人がフリーランスになってもうまく立ち回れるのは、この類似が理由である。
パートナーシップとアライアンス
「パートナーシップ」
フリーランスというと一人で活動しているイメージがあるが、実際に一人でできることは限られる。だからフリーランスも法人と同様に組織を作り、活動する。この点でも両者は似ている。
フリーランスが集まった組織(チーム)はチームランスとも呼ばれる。この組織は、雇用関係を結んでいない点で法人組織とは異なる。雇用契約には雇用者と被雇用者という非対称な二者が登場するが、チームランスは対等な個人同士の「パートナーシップ」の契約(もしくは不文律)である。
「アライアンス」
パートナーシップもアライアンスも、フリーランスもしくは企業単体ではリーチし得ない顧客、提供できない価値、受注できない案件を融通することを目的とする。
双方が対等な立場であるため、両者の関係性に「命令」や「従属」は存在しない。必要なのは「連帯」であり、「共存」である。
自由と自立
もし関係性に「従属」の色合いが見えるとフリーランスは修復を図る。言われるがままに行動することをせず、意思を持って提案することで横並びを志向する。もしくはコミットを調整するために距離を取り、交渉する。
精神的マウントに対して、それをひっくり返すか、もしくは離れるというわけだ。
フリーランスにおける自由とは、自ら選択権を持ち、人生やキャリアの舵取りをしている状態である。働く場所や時間を選び、クライアントやコミットを自分で決める。
自立とは、この自由を自らの手で実現させ続けることである。特定の他者に依存した自由は、自立とはいえない。自立なき自由はかりそめの自由であり、いつ終わるとも分からない不確実さをはらんでいる。
フリーランスは「自由」と「自立」の両立のために、特定の従属先や依存先を否定する。すると、どこにも依存せずに生きていく強さがフリーランスには必要だ、ということになる。
しかし、実際には「自立」は他者との隔絶を必ずしも意味しない。先程述べたとおり、フリーランスが一人でできることは限られているのだ。だからこそパートナーシップやアライアンスを組む。
山に入り仙人のように生きる孤独とも似た自立とは違う自立の在り方を提示したい。人との連帯の中で生き、特定の他者への依存を回避する方法があるのだ。
それが「不特定多数への依存」という在り方である。
不特定多数への依存
先に述べたように、フリーランスの「自由」と「自立」は不特定多数への依存によって達成される。どういうことか。
まず、フリーランスがその活動基盤を「特定の依存先」に限定してしまった場合を考えてみると、そこに自由はない。
依存先が1つでは、フリーランスは交渉力を持ち得ない。依存先にとってはフリーランスは代替可能な存在であるが、フリーランスにとって依存先は代替不可能だからだ。
この非対称性は「今回の報酬額だとちょっと割に合わないので」という断り文句を押しとどめる。このフリーランスにはその依存先が全てなのだ。断ってしまっては食べていくこともままならない。
だから「特定の依存先」という姿勢は危うい。
では「特定の依存先」に限定しない活動基盤を築くためにはどうすればよいか。答えは単純で「不特定多数の依存先」を見つければいい。
もしくは自分でその依存先を創りだすこともできる。実際、わたしは今年になってFreelanceNowというフリーランス600人ほどの互助組織としてのユニットを立ち上げている。
- 知人、友人等のネットワーク
- クラウドソーシング
- スキルEC
- マッチングプラットフォーム(UBER、Airbnb、エニタイムズ等)
- コミュニティ、サロン、コワーキングスペース
- 貯金残高、信頼残高
これらの依存先を組み合わせて、自分の活動方針にあった依存先ポートフォリオを構築することが「自由」と「自立」には決定的に重要となってくる。
さらに、依存先の一つを失っても問題ない状態ならば、リスクを取ってチャレンジすることもできる。自身の可能性を広げるためにも、依存の分散は必要である。
フリーランスは依存先を増やすことで自由になる。フリーランスのフリー(Free)は自由を意味することを思えば、
フリーランスは依存先を増やすことによってこそフリーランスになる
と言える。
依存先は今後も増えるが、一部の依存先はテクノロジーによって消えてしまうこともあるだろう。さらに、フリーランスとしての活動も多様化している。
そうした内外の変化に敏感になり、依存先ポートフォリオの更新と最適化を継続することが、これからのフリーランスに必要になるだろう。
この主張はフリーランスのポートフォリオワーカー化を暗示するが、これについては別の機会に論じたい。