お役だち記事

「友だちになるまで何時間かかるか?」

著者のWebメディアからの転載記事です。
(著者:黒田悠介さんからの承諾はいただいております)

親密度と時間に関する研究

「友だちになるまで何時間かかるか?」という最近いろんな文脈で引用される論文があります。

カンザス大学のジェフリー・ホール教授による論文で、ざっくりと人間関係の度合いを以下の4段階に分類して、その関係性に達するまでに必要な「一緒にすごした」時間をリサーチしたものです。

A. 知り合い
B. それほど親しくない友人
C. 友人
D. 親友

そのリサーチでは、Aの段階からBに達するまで約40~60時間、Cに達するまで80~100時間、そしてDに到達するには200時間以上かかるという結果に。

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ここで気になるのは「一緒にすごした」時間のカウントにリアルとオンラインで差はあるのか?ということ。

元のリサーチを見てみると、リアルで会ったこととオンラインで会ったことを特に分けて議論していないようでした。

※元の論文はこちらから見れます。

オンラインは「一緒にすごした」にカウントされる?

コロナウイルスの状況もあり、このところオンラインで人と会うケースが増えています。

その時間を私たちの脳は「一緒にすごした」とカウントしているのでしょうか?それとも、割り引かれたりノーカウントになっていたりるのでしょうか?オンラインでの交流で親友になるには200時間以上かかるでしょうか?

この問いの背景には、オンラインコミュニケーションでは、リアルでは届いているなにかが届いていないという感覚があります。最近の会話でそれを「熱量」と表現したりする人もいました。

実際、オンラインコミュニケーションは「情報」を伝えるのには非常に効率的で良いことづくめですが、「感情」を伝えたり「共感」を生むには少し足りない気がするのです。

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オンラインでは社会的シグナルが失われている

やっぱり、なにかがオンラインコミュニケーションでは割り引かれているものがある。

私はそれを社会的シグナルだと考えています。具体的には瞬きや目線、声の抑揚、仕草、模倣、反応潜時、微表情など。

発話内容は言語情報として相手の届きますが、対面の場合は言語情報以上に社会的シグナルがやり取りされていて、それによって人と人の関係性が変化しているんじゃないか。

これらの社会的シグナルのおかげで私たちは気持ちを察することができていると思うので、これが届きにくいオンラインコミュニケーションでは、どうしても感情が伝わりにくく、共感も起きにくいんじゃないかなと思うのです。

そういう意味では、社会的シグナルが高解像度で伝わるオンラインコミュニケーションの仕組み(5G、AR、ホログラムなどを活用)ができたら、オンラインでも「一緒にすごした」という親密度を高める時間としてカウントされるようになるのかも。

事前にリアルで会っていれば脳内補完できそう

また、事前にリアルで会って「一緒にすごした」ことがあるのとないのでは、オンラインコミュニケーションがカウントされるかどうか変わってきそう。

リアルで会ったときの言動から「こういう感じの人なんだな」というモデルが脳内にできあがっていれば、そのモデルを使って相手の社会的シグナルを脳内補完しながらオンラインコミュニケーションできたりするんじゃないかな。

そうすればオンラインコミュニケーションも「一緒にすごした」時間としてカウントされて、親密度を高めることができるかもしれません。

オンラインコミュニケーションについて考える機会

このコロナウイルスの状況は、オンラインコミュニケーションについて考える機会になっています。様々な取り組みが行われていますが、人との物理的な距離が精神的な距離にも影響してしまっては、社会が分断されてギスギスしてしまう。

そんなこともあって、オンラインコミュニケーションと親密度について書いてみました。ご参考になれば嬉しいです。