著者のWebメディアからの転載記事です。
(著者:黒田悠介さんからの承諾はいただいております)
概要
フリーランス研究家としてインタビューを受けたりイベントに登壇したりするたびに、この質問に答えてきました。フリーランスはとても多様な存在なので一括りにするのは難しいのですが、いくつかの答え方があります。
例えば
「A.フリーランスは一人でなんでもやらなきゃいけない」
という答えです。フリーランスが自由であるのは、全てを投げ打ったからではなく、全てを自分で抱え込んだことによる。だから、営業も経理も会社の機能を自分で引き受けなければいけない、ということです。でも、それらの機能はいくらでもアウトソースしたりシステム化して自動化・省力化できるので、あまり大きな違いでもないと感じます。面倒だと思うのはこの時期の確定申告くらいでしょうか。他にも
「A.フリーランスは同僚がいないから寂しい」
という答えもあり得ます。このようにフリーランスは所属欲求が満たされにくいと思われがちですが、それはコミュニティの種類を会社に限定した考え方です。会社に所属しないフリーランスでも、他にいくらでも所属先を見つけることができます。地域であったり、サロンであったり、フリーランス同士のコミュニティであったり。私の場合はフリーランスを集めた「FreelaneNow」や、議論でメシを食っていく人を集めた「議論メシ」といったコミュニティを立ち上げて自ら居場所を作ったりもしました。
あるいは
「A.フリーランスは自分の武器を持たなくてはいけない」
という答えもあり得ます。確かにフリーランスの「ランス」はもともと槍を意味していて、武器を手に戦う傭兵に由来するそうです。フリーランスは武器を持っていないと仕事がもらえないというわけですね。しかし、それは会社員でも同じことでしょう。
一番の違いはトップダウンの不在
タイトルのQに対するAを3つ挙げましたが、どれも芯を食った感じがしない。では、フリーランスと会社員の根本的な違いはなんなのでしょうか?日々多くのフリーランスと接し、フリーランスを体験している私が感じるのは
「A.
トップダウンの不在」
です。トップダウンの例として、会社にはビジョンや目標があります。また、上司がマネジメントや育成を担っています。フリーランスにはこういったトップダウンがないのです。
フリーランスは誰かにビジョンを授けてもらうわけではないので、自分でビジョンを決めなくてはなりません。ビジョンなしで活動を続けることもできますが、少なくとも意思決定の軸を持っておかないと、全ての判断を短期的で視野が狭いものにしてしまいます。これでは安定したフリーランス活動はできません。また、フリーランス活動に目標があり、ビジョンを持っている人のほうが、共感を得やすく仲間や仕事も集まりやすいものです。
また、上司がいないということは、セルフマネジメントの必要があるということですが、それ以上に重大な違いは「教育」について考えてくれる人がいないということです。
フリーランスは誰からも育てられません。
クライアントの立場で考えれば、フリーランスを育てるよりはもっと優秀なフリーランスを探すほうが早い。育成するなら社員にそのリソースを使うべきです。だから、フリーランスは自ら育つほかない。このようなトップダウンの不在こそ、会社員との違いだと感じています。フリーランスは、だからこそ、手元の仕事に全ての時間を注いではいけません。長期的な働き方を考えて自らビジョンを立て、自らを教育し、セルフマネジメントをするための時間が必要なのです。
この観点で考えると、複業(副業)はトップダウンを維持したままフリーランス活動ができる働き方とも言えます。様々な働き方とそこにある違いを理解して、自分にぴったりの働き方を試していきたいものですね。