著者のWebメディアからの転載記事です。
(著者:黒田悠介さんからの承諾はいただいております)
概要
クリエイティビティを発揮するには、真面目さよりも楽しむ姿勢が重要であることが、分かってきています。
その科学的な根拠や、どうしたらクリエイティブでいられるのか、といったことを書いてみますので、お読みください!
ではいきます!
「成果」は型にはまりやすい
成果を求めるほど創造性が低下する。これはアメリカの心理学者であるR.J.スタンバーグ氏らによる実験で実証された研究成果です。
ただ、この研究成果を見るまでもなく、私たちは成果を求めるうちに創造性を失いがちだと薄々感じている気もします。
それはなぜでしょうか?
それは、成果は「測定可能」になりたがるからです。
成果とは評価されるもので、評価されるためには成果を生み出す行動の前後で分かりやすい変化が測定されなくてはいけません。
例えば、これまでよりも10%早く作業を終えた、これまでよりも10%CVRを上げた、これまでよりも10%顧客満足度を上げた、など。
このように、分かりやすい変化とは、型にはまった定量的変化です。型破りな質的・定性的変化ではありえません。
成果は測定可能な定量的変化になりたがる。型にはまりたがるのです。
定性的変化はリスクを伴う
成果は定量的変化になりたがる。では、定性的変化は成果と認められることが無いのでしょうか?
そんなことはありません。
ただし、既存のモノサシで測定が難しい定性的変化が成果として認められるためには、その定性的変化が十分に大きくないといけません。測定できないなら、誰にでも「めっちゃ良いじゃん!」感じられるくらいのわかりやすい変化にならないと、成果とは認められない。
ですが、それだけの定性的変化を生み出すには失敗のリスクが伴います。この失敗のリスクは、成果を求める真面目な心理とは相容れない。そのため、成果と認められるほどの定性的変化は避けられがちになります。
結果として、成果を求める人間の行動はちょっとした変化でも評価されやすい定量的変化を生み出すタイプのものになりやすい。
定量的変化は型にはまりやすいですから、成果を求める真面目さによって創造性は低下し、新しいモノゴトを生み出せなくなるというわけです。
「楽しみ」と「反省」が創造性を高める
創造性を高めるには成果を出そうとしてはいけない。だとすると、私たちはどういった姿勢でモノゴトに取り組むのが良いのでしょうか?
心理学者のトッド・ルバート氏が芸術学部学生を対象に行った長期間の調査によれば、プロの芸術家になるタイプの学生とそうでない学生には、創造活動中とその後の姿勢に違いがあったそうです。
以下にその対比を示します。
◆プロになるタイプの学生→創造活動中は「楽しい」が、できあがった作品を振り返ると「納得できない」
◆プロになれないタイプの学生→創造活動中は「苦しい」が、できあがった作品を振り返ると「満足している」
つまり、創造性は楽しむ姿勢と相性がいいのです。加えて、その結果には満足せずに反省し、次に活かそうとする姿勢が必要です。これはいろんな創造的活動に当てはまるのではないかな、と思います。
実際に、わたしの仕事の場面でも思い当たる節があります。
大事なディスカッションだから頑張って良い成果を出すぞ、という意気込みが強すぎると、かえって凡庸な内容になってしまう。決して悪くは無いのですが、とても良いということにはなりません。
逆に、創造的なディスカッションができたときはとても楽しいものですが、終わってみると「もっとこうしたら良かったのでは」という反省が頭のなかを巡ります。
このような「楽しみ」と「反省」という姿勢を普段の仕事にも取り込むと、創造的な成果が出せる確率が高くなっていくはずです。
真面目に成果を求めすぎているかも、と思ったらちょっと気を緩めて楽しむ余裕を持ちましょう。それがあなたの創造性を高めます。うまくいかなければ反省すればいいんですから。
お試しあれ!